アインシュタインAIの裏側 — テックジョイントのデモはどう作られたか
なぜアインシュタインだったのか
テックジョイントがAIエージェントのデモを作ろうと思ったとき、最初の問いは「何をデモするか」ではなく、「何を証明するか」でした。
AIエージェントには、普通のチャットボットにない特徴が一つあります。使うほど賢くなるということです。会話を積み重ねるたびに相手のことを深く知り、文脈を引き継いで話し続けられる。これが、ただのQ&A機能と根本的に異なる点です。
しかし、この違いを言葉で説明してもなかなか伝わりません。「記憶します」「文脈を理解します」——どのAIサービスもそう書いている。実際に触ってもらうしかない。
では、何で触ってもらうか。
ここで「歴史人物」というアイデアが浮かびました。アインシュタインの発言録、書簡、インタビュー、伝記——これらは公開されており、品質が高く、誰もが知っている。「アインシュタインっぽいかどうか」を、ユーザー自身が直感的に判断できます。
さらに、物理の難問は答えの正誤が検証可能です。「相対性理論とは何ですか」という質問に対して、教科書的な正解と、アインシュタインらしい語り口の両方を評価できる。これはデモとして理想的な題材でした。
普通のチャットボットとの本質的な違い
一般的なAIチャットは「検索して返す」しくみで動いています。
質問が来ると、知識のデータベースから関連する情報を取り出し、答えを組み立てる。賢く見えますが、本質的には今の質問に答えるためだけに動いているのです。会話が終われば、その内容はリセットされます。
テックジョイントのアインシュタインAIは、違うアプローチで動いています。名前は「Anamnesis Engine」——古代ギリシャ語で「思い出すこと」を意味する言葉です。
比喩で説明するとわかりやすいかもしれません。
検索して返すAIは、百科事典に話しかけているようなものです。何を聞いても正確に返してくれますが、昨日あなたが何を読んだか、どんな疑問を持っていたか、百科事典は覚えていません。
Anamnesis Engine は、ノーベル賞後に隠居した老アインシュタインのようなものです。何十年分の思索と経験が積み上がっており、「さっきの光の話に戻ると……」と自然につなげられる。ある概念に触れると、それに関連する記憶が自然に浮かんでくる。
この「浮かび上がり方」が、ただのデータ検索と異なる点です。
111件の記憶レコードをどう作ったか
アインシュタインAIの中核には、111件の「記憶レコード」があります。これは彼の人生と思想を構造化したデータです。
技術用語を使わずに説明すると、一人の人間の「記憶の地図」を作った、というのが一番近い表現です。
作業は大きく3つのフェーズに分かれました。
フェーズ1:素材の収集と選別
アインシュタインが残した書簡、自伝的エッセイ、インタビュー記録、晩年の講演録——これらを素材として集めました。重要なのは「何を言ったか」だけでなく「なぜそれを言ったか」です。
単純なQ&Aシステムなら「相対性理論とは?」の答えを1行書けばいい。でも記憶を持つAIには、その概念がいつ、どういう文脈で形成されたか、他のどんな考えと結びついているか——この文脈が必要です。
フェーズ2:記憶の構造化
収集した素材を「記憶のかたまり」に変換します。一つの記憶レコードは、概念の説明だけでなく、「アインシュタインがこれをどう体験し、どう考えたか」という一人称の文脈を含んでいます。
たとえば「光電効果」の記憶は、単に物理現象の説明ではなく「1905年、当時の物理学者たちからどう見られていたか」「この発見が彼自身の思想にどう作用したか」を含む、より豊かな形になっています。
フェーズ3:接続のチューニング
111件の記憶が孤立したデータとして存在するだけでは不十分です。「光」の話から「時間」の話へ、「科学」から「平和主義」へ——記憶同士がどうつながっているかを調整します。
実際に試しながら調整を重ねました。「相対性理論の話をしていると、なぜか突然ナチスの話になる」といった不自然な跳び方は何度も起きました。文脈の流れが自然になるまで、繰り返し修正を加えています。
試した人の反応
内部テストを含めて、いくつか印象的な反応がありました。
**「教科書と違う」**という感想が多かったです。検索で出てくるアインシュタインの説明は、どこも似たような構造になっています。でもこのデモは、同じ質問をしても毎回少し違う角度から答えが来る。それが「本当に考えている感じ」として伝わるようです。
**「ちゃんと覚えている」**という驚きもよく聞きます。「さっき言ってた矛盾について」「前の話に戻ると」——こういう言い方をすると、ちゃんとその文脈で話が続く。普通のチャットボットではこうはいかない。
一方で**「専門用語が多い」**という声もありました。物理の説明は技術的になりがちで、アインシュタイン本人も専門家として話すため、難しさがそのまま出てしまう。これは現在も調整中です。
「あなたのAIエージェント」へ
アインシュタインAIは、テックジョイントの技術を示すデモです。ただし、重要なのは「アインシュタインを再現すること」ではありません。
同じしくみで、あなたのビジネスに合ったAIエージェントを作れるということを示しています。
記憶するのはアインシュタインの思索だけじゃない。あなたの顧客との会話、過去の判断、蓄積してきた知識——これをAIに持たせることができます。
- 「以前この顧客はこういう懸念を持っていた」を引き継いで対応するエージェント
- 「半年前にボツにした企画の理由」を覚えていて、似たアイデアが出たとき参照するエージェント
- 「この人はこういう伝え方が合っている」を学習して、コミュニケーションを最適化するエージェント
規模は問いません。一人経営の方でも、チームの中に一人AIエージェントが加わる感覚で使えます。
アインシュタインとの対話は、下記のデモページで今すぐ試せます。まず体験してみてください。
このデモを作った経緯や、Anamnesis Engine の技術的な詳細に興味がある方は、テクノロジーページもあわせてどうぞ。カスタムAIエージェントの開発については、サービス概要またはLINEでお気軽に。